2016年に爆進したMoneroを調べようと以下のYoutubeの動画を見ました。見ていて何か似たようなものを見たことがあると思ったら、IPO(新規上場)前のベンチャー企業のロードショー(IPO承認後の投資家向け説明会)みたいだなと気づきました。MoneroがBitcoinのプラバシーに関する問題を克服したものであるというコインそのものの優位点の説明だけでなく、開発体制についても半分近くの時間を費やして説明している点が印象的です。
今回は暗号通貨とIPOの類似点とその問題点を考え、そこに対する規制の現状、あるべき姿を考えてみたいと思います。ちなみにMoneroを例に書いていますが、Moneroをおとしめる意図はありません!
暗号通貨の上場ゴール問題
Moneroの歴史を簡単に振り返ると、thankful_for_todayというニックネームのメンバーが2014年4月に最初にコインを作り出しました。その後、thankful_for_todayが他メンバーの意見を聞かなくなったことから、現在のコア開発メンバーがMoneroをFolkして別のブロックチェーンを生み出したのが現在のMoneroです。
Moneroの開発メンバーは7名でしたが、それ例外にも25名のContributorや協力者がいて、Moneroのアップデートを続けています。
当然この中心メンバーはMoneroにほぼ全力を傾けているため、開発を続けるには資金が必要になります。資金源は基本的には募金で賄われているようですが、今後も開発を続けるには、継続的にMoneroの価値をあげて、コイン(≒株式)を公開市場で取引して現在保持しているMoneroを売却するなどして利益をあげる必要があります。もちろん、個人間でも暗号通貨の取引はできますが、株式同様公開市場での取引の方がはるかに簡単に取引のマッチングが可能です。
ベンチャー企業の上場の場合には、上場前に引受証券会社や取引所による審査があります。近年は上場ラッシュで審査があまく、以下のような事件も起きていますが、基本的には上場不適合な企業は上場できない仕組みができあがっています(例えば、詐欺を働いているような犯罪企業や、ネズミ講企業など)。
さらに、当然ながらベンチャー企業の場合は本業によって収益をあげてそれを運営資金とするということができますが、暗号通貨の場合には自分の開発した通貨を他の通貨(円、ドルだけでなく、Bitcoinなども含む)に変換することで"上場ゴール"する以外に収益化の方法がないため、詐欺行為や体制が不十分な状態での取引所上場に対するインセンティブが働いてしまいます。
それに対して、第三者が最後の歯止めとしての役割を果たせているかというと、暗号通貨の上場の場合には、当然引受証券会社はなく、取引所の審査も法律で縛られているわけではないので、コイン利用者にその利用可否の審査が委ねられている状態になってしまっています。
日本における暗号通貨規制の現状
個人的には、審査を個人以外の第三者が行った上で公開市場に流通させることで、コイン利用者が詐欺に遭う可能性を減らしてあげることが、暗号通貨の普及にあたっては重要になると考えています。
日本でその規制を主に担うことになるのは、資金決済法及び監督官庁である金融庁です。
仮想通貨に対する改正資金決済法等の動向と課題|2016年7月号|金融ITフォーカス|刊行物|NRI Financial Solutions
2016年5月の法改正(6月4日公布、1年以内に施行予定)により、仮想通貨の取引所が登録制になり、原則として登録していない取引所は仮想通貨の取引が禁止されることになりました。またこの法律の制定をうけて、金融庁が取引所規制の内閣府令の案を提出しており、ガイドラインの中で以下のように述べています。
(I-1-2 仮想通貨交換業の該当性及び取り扱う仮想通貨の適切性の判断基準)当局は、仮想通貨交換業に係る取引の適切性及び取り扱う仮想通貨の適切 性等について、申請者に対して詳細に説明を求めるとともに、認定資金決済事業者協会の 公表する情報等を参考としつつ、登録の申請の審査等を実施するつまり、認定資金決済事業者協会の情報をもとにして、取引所の登録申請時に取り扱っている仮想通貨の妥当性を金融庁が審査したうえで、取引所としての登録を認めるということです。当然登録された後も、金融庁による定期的な監査の中で取り扱い対象通貨に対する監査も含まれることが予想されることから、日本国内においては詐欺行為を目的とした暗号通貨の流通に一定の歯止めがかかることが予想されます。